「おい、先生様。この間の隕石が落ちてきた件。あれは事故じゃなかったのか?」
剛田は、安原につっかかった。
「あり得ない。あり得ないんだよ。こんな狭い範囲で、隕石が、それも続けて落ちてくるなんて、そんなのあり得ない。」
「そんな事言ったって、今、現実に起きているだろうが。」
剛田の言葉に、答える事は出来なかった。どんな答えを言ったとしても、全て嘘になってしまう気がしたからだ。
「おい。黙ってないで、なんとか言えよ。」
「・・・。」
「おい。」
「そんな事言ったって、わかる訳ないだろ。少なくとも、僕が知っている限り、同じ場所に隕石が落ちた事はない。けれども、それが全てを示している訳じゃないだろ。地球が生まれて四十六億年。一度もそう言う事がないと言えるのか?」
普段おとなしい安原がキレた。
「そ、それは・・・。」
今度は、剛田が防戦にまわった。
「ほら。お前だってわからないじゃないか。それに、この事が、仮に事件だとしよう。お前は、どうやって宇宙にある物体を操るって言うんだよ。そんな事、わからないだろ?わからないものを、どうやって殺人として捜査するんだよ。ほら、言ってみろよ。」
「・・・。」
「さんざん、人の事言っておいてそれか。自分がわからないからって、人に八つ当たりするのも大概にしろ。」
そこまで言って、やっと怒りが収まったのか、安原はどかっと椅子に座り、うなだれた。剛田は、ただ、安原の様子を見ている事しか出来なかった。返す言葉も見つからず、その場に立ったまま、何もする事が出来なかった。
剛田がやっと口を開いた。
「すまん。安原。」
この場から立ち去る。それが剛田に出来る唯一の選択だった。