ある中学校では、全校生徒が集められ集会が行われていた。
「今日はみなさんに悲しいお知らせがあります。」
今や、朝のテレビと言ったら芸能情報一色だ。だから、ほとんどの生徒は校長が、これから何を話すのか、全く想像もつかなかった。少しずつ、ざわめきが起き始めた。
「三年・・・。」
そこで、校長は言葉に詰まった。ざわめきは、いっそう力を強めた。いつもなら、ここで体育教員の一喝がある。皆、無意識にそちらを見た。しかし、体育教員も、体育教員だけでなく、他の教師達も肩を落とし、俯いていた。
「三年二組の坂井先生が・・・、お亡くなりになりました。」
ざわめきは最高潮に達した。さすがに、このままではいけないと感じたのだろう。深呼吸してから、体育教員が声をあげた。
「うるさいぞ。」
しかし、言葉にキレがない。それを自分でも感じ、もう一度、声をあげた。
「うるさいって言っているのが聞こえないのか。」
それでも、いつもに比べるとキレがなかった。けれども、生徒達は静かになり、再び校長は話をはじめた。
「本当に不幸な事故でした。先生に、先生に、隕石が落ちてきたのです。」
隕石と言う聞き慣れない単語のせいで、生徒達はお互いに顔を見合わせ、おのおのに確認した。
「隕石?隕石って、あの空から降ってくるあれか?」
「待て、待て。今、ネットで確認してみるから。」
携帯を取り出し、ニュースのトピックを確認した。
“中学教諭 隕石が落下し死亡”
「あった。昨日の夜に、緑町で隕石が落ちてきたらしいぞ。隕石は、頭から腸までいったらしいぜ。」
「マジかよ。そら、死ぬわな。」
「ま、でも、ここにいるほとんどの奴は死んで良かったって思ってるんじゃないの?あいつ、本当に嫌な奴だったもんな。」
「確かに。俺も、せいせいしてるもん。」
死んだ坂井と言う教員は、生徒達の評判が最悪だった。口々に同じような事を言っていた。そんな中、違う視点でつぶやいた生徒がいた。
「でもさ、緑町って言ったらすぐ近くだろ。また、ここら辺に隕石落ちてきたりしないのかな・・・。」
「まさかぁ。」
「たまたまだよ。あいつが、あまりにひどい教師だから罰があたったんだよ。隕石がここら辺にばかり落ちるようになったら、それこそこの世の終わりだよ。」
誰も真剣に受け止めようとはしなかった。