剛田とは対照的に、彼の口からは何も出てこない。出てくるのは涙。いばらの涙だ。自分に対する憎しみ、怒り。剛田に対するものとは比較にならない、この世界の憎しみ、怒りを全て、彼自身が受け取る、それくらいに自分の存在を憎んだ。
同時に存在意義を確認した。
いじめられ、引きこもり、そして、葉月の事を支配するつもりだった。その支配対象を、自分の手で壊してしまった。もう、どこにも存在意義を見出せなかった。

願いは届く。

彼の頭上に、真っ赤な、とても大きな薔薇が咲いて、そして消えていった。彼の命も、また消えていった。

本当に欲しいと思った彼女の元に、彼は堕ちていった。