異次元の王子と癒しの姫君


アデル王子が苦しそうに呻いていた。
その近くに立つクラウドの全身には黒い煙のようなものが覆っている。

ナナミは近づこうとするが進めなかった。
クラウドが纏っている黒いモノが発する不快な感覚に鳥肌がたち躰が拒否をする。

「このままでは力が暴走してクラウド様が大変なことに!
止められるのはナナミ様だけです」


セドラの言葉に焦る、何とかしないとクラウドが。
でもナナミの思うとおりに躰は動いてくれない。
あの黒い物体がとても恐い。


「ナナミ様!クラウド様を止めて下さい」

そんなこと言われても恐くて動けないよ。

「あなたは癒しの姫です。癒しの姫には止める力がある。このままだとクラウド様は力を暴走させて死んでしまう」

クラウドが死ぬ?
そんな……いやだよ。

絶対止めないと。
ナナミの意思に反応したかのように胸元のペンダントが光を放つとクラウドを覆う黒い煙に向かっていく。
と同時に恐怖は無くなりナナミの足は歩を進める。

ナナミはクラウドを後ろからそっと抱きしめると黒い煙はスーッと消えていきクラウドの力は急に抜けた。
呻いていたアデル王子は気を失ったようだ。

そのままナナミが抱き締めていると手にクラウドの手が重なる。

「ナナミ?」

「良かったぁ……もう大丈夫だね」

重なった手をそっと外しクラウドが振り返る。

「どうしてここに?」


クラウドの無事を確認したら急に眠くなってきたそのまま目を閉じると倒れそうになったナナミを慌ててクラウドを引き寄せ胸に抱えた。