異次元の王子と癒しの姫君



アデルが入って行った部屋の中には誰もいなかった。


「アデル!来てくれたのね」

女の人の声が聞こえアデルが振り向くと車イスに乗った女性がいて。
侍女に車イスを押してもらいながらゆっくりと近づいて来て、アデルの前で止まった。

「母上、具合があまり良くないと聞きましたよ。大丈夫ですか?」


「またムハトが大げさに言ったのね、わたくしは大丈夫です。それより昨日リカーナ様がいらして久しぶりに色々なお話しをしたのよ」


「ムハトから聞きました。あの人が来たせいで具合が悪くなってしまったって。せっかく体調が落ち着いていたのにいい迷惑ですね」


「アデル何を言っているの?リカーナ様とわたくしの体調は関係ありません。ディアナ様が一時いなくなった話しを聞いてショックを受けたのです。
けしてリカーナ様のせいではないのよ」


「母上は悔しくないのですかっ。あの人が王妃様になれたのは母上が辞退したからでしょ?王妃の座は母上に決まっていたのにっ……それにあの人は母上の」