交互に彼と街を見る。



街の中に、こんなに暗く静かな場所。



街の喧騒が遠く耳に届く。


最上階のせいか冷たい空気は都会の匂いも感じさせず澄んでいた。



「当直の時とか、よく来るんだ。」


彼の口から少し息が漏れ口角が上がって笑顔が作られた。


「無になれる、というか。一人になりたい時は特にね」


「………」


そう話す彼をじっと見つめたまま、レイもまた黙って聞いていた。



「少しの間、空や街を眺めてね、ネオンの動きをボーッと眺めてね…」


「………」


「で、また仕事に戻る」


そう言って彼はレイに視線を落とした。



絡む互いの視線から反らすことなくレイはじっと彼の目を見つめた。



20ｾﾝﾁ程の彼の顔との距離を風が一筋の帯となって吹き抜けた。



「私……」


「………」


彼も何も言わずにレイを見つめる。



「私……」


「………」


背中に置かれた彼の指先がそっと撫でるようにレイの髪に触れた。


髪の1本1本の神経が逆撫でるように集中する。


その心地良さが頭から全身に伝わっていく。