Love their

「ただ、母は最後まで父を愛していたんだ。だから僕がいくら恨んでもそれが母の望むことじゃないんだとしたら…」



「僕には父をどうしても助けなければいけない義務がある…そう言い聞かせたよ」




そう言って彼は残りのワインをレイのグラスに注いだ。





すかさず注文をとりにきたウェイターにチェックを伝える彼。



「レイ…」



「あ…っはい…」



「つまんない話してごめんね…部屋に帰ってゆっくり飲もうね」



そう言って申し訳なさそうに頭を下げる彼。



「つまんない、だなんて全然思ってないよ…私で良ければちゃんと聞かせて欲しい…」



レイはテーブルに置かれた彼の左手をそっと手に取り言った。




「レイ、君に聞いて欲しいんだ」




重ねた手の上に彼の右手が覆う。






優しい眼差しの中に生きる彼の過去を知りたい―。






彼の全てを知りたい―。







レイの頭の中に一枚の写真が蘇る。





笑顔の消えた写真の中の彼も全部。






全部…受け止めたい。





そんな自分の気持ちを大事にしたい。





愛することは、そんな自分を大事にすることなんだ。