Love their

「…言い方がまずかったのかもしれないね…」



彼はそんなレイの金縛りを解くように優しい言葉で、優しい目で呟いた。




「………」



「僕の父親はね…僕が担当した初めての入院患者だったんだ…」



ゆっくりと話を続ける彼。



レイは黙ったまま頷いた。



「本当なら身内を担当するのは良くないんだけどね…」



身内を担当するとどうしても私情が入ってしまい避けることが多く自分が信頼の置ける医者に任せることが多いという。




「父親をずっと恨んでたんだ…子供の時からね」




「だけど…医者になって最後だけは父親を救いたい、そんな気持ちがあったんだ」



彼は自ら望んで担当したという。




初めて聞く彼の知らない過去。




レイは触れていいものかどうか分からずに、彼の話をじっと聞いていた。




「僕の母親はね、中学に入る前に癌で亡くなってね。医者になるって決めたのもそれからだったよ」



彼は昔を思い出すように時折目を閉じながらゆっくりと話した。



「あとは、自由奔放な父親の生き方が嫌いだったんだ…母親の死を早めたのも…父親だと思っていたよ…」