お姉ちゃんの憂鬱


自分がその立場だったら。それが一番相手の感情を理解する上で効果的だとあたしは思っている。


もちろん生きてきた環境も育んできた人格も違うのだから、すべてを理解するのは不可能だ。


でも話を聞く上で確実に必要なことだと思う。




「もしあたしがまどかの立場だったらの話をしてもいいですか?」



頷くまどか母を見て頭の中で考える。


もしまさえと何らかの形で別れることになって、義治が若い女性を連れてきて新しいお母さんだと言う。

その女性はいきなりできた高校生の娘に不安を感じている。



「もし、あたしがまどかと同じ立場だったら…」



確実に戸惑う。そして、きっと怒りを覚える。



「自分の父親が連れてきた人なら、反対しないで家族として迎え入れるとは思います。でも、肝心の新しい母親が、娘ができて不安ですなんて態度だったら、確実になんだそれってなりますね。

そりゃあ高校生にもなって表だって反抗はしないと思いますけど、信頼はできないかもしれません。

でもきっとママさんは距離を詰めようとしていろいろ頑張るんですよね。たくさん話しかけたり、帰りが遅いと連絡をいっぱいしたり、どこに行って何をしてたか質問するんですよ。

でもあたしからしたら、自分の母親になることに不安を感じている人にそんなに干渉されるのはしんどい。そしてもっと距離が開くんです。

で、そんな状態が長く続いたら、距離の取り方が分からなくなって、自分でもどうしていいかわからなくなる。もちろんママさんが仲よくしたいと思っていることは分かっているから、余計に近づき方がわからない。」