直くんと数学科研究室を後にして教室に戻ると、いつもの位置にいつもの笑顔でまどかが待ち構えていた。
「お疲れ。疑問は解決したかい?」
「ほとんどノートに答え書いてあったわ。」
「マジか。直江は?」
「ノートを写すところから始めます。」
「…あいかわらずお馬鹿だなぁ。」
学校でのまどかはいつも楽しそうだ。
でも、思い返してみれば編入してきたばかりのころはいつもすました顔で、どちらかというと冷たい印象だった。
話しかけられてもぶっきらぼうで、笑顔なんて皆無。
もしかすると、家でのまどかはあんな感じなのかもしれない。
そんなことを考えだしたら止まらなくなった。
まどかは家で、どんな顔をしているんだろう?
「かーちゃん?どうかした?」
「ん?なにが?」
「なんかぼーっとしてね?」
「数学と向き合って脳みそが活動停止を求めているのかもしれない。」
こうやって、あたしを気にかけて声をかけて元気をくれるまどか。
いつも去り際に少しだけ寂しそうな顔をするまどか。
「香奈子、そんなこと言っててオレのスパルタについてこれるのか?」
「え、メグってスパルタなの?!優しく丁寧に教えてください。」
「手とり足とりってか?」
「きゃー吉岡ったらエロおやじー」
「吉岡くんのむっつりー」
「メグ君のイケメーン」
「なんでオレ褒められたんだろう。」
「直江だしな。」
「直江君だからね。」
「直くんだもんよ。」
「僕ですからね。」
直くんの気の抜けた言葉に、気の抜けた笑顔を見せるまどか。
少しだけ心配になった。

