「堂前くんは知らんやろーけど、そのきれいな子、実はかなりの性悪女やねん。男子を次々と手玉にとっては捨てていくんやって」
堂前に向かって、その女の子はまくし立てる。
「へぇ」
へぇ、ってなんやねん……。
突っ立って、否定もせずにそれを聞く堂前に、マリアは心の中でツッコんだ。
「サッカー部の城島くんもあの子にボロボロにされたクチで、そのせいで今だにスランプに陥ってるらしいよ」
いや、それは本人の問題やろ?
そこまでウチの責任にするか?
「堂前くんも大事な時期やん。1年のときからずっと勉強がんばってきて、これから受験勉強本番ってときに、こんな子に関わってたら、人生台無しになるよ」
……はいはい。
堂前と同じクラスってことはあの子も特進クラスか。
そーいえば頭良さそうやし、顔もまー可愛いやん。
きっと堂前のことが好きなんやろーな……。
ひとり取り残されて、マリアはぼんやりとその女の子のことを眺めていた。



