スタート地点に立った聖くんは


「合図ちょうだい」


と言ってきた。   


「えっと、よーい…スタート!」


これでいいのかな?と不安になるあたしの声と対象的に、地面を蹴って自信満々に聖くんは走った。




あ……。


一瞬で分かった。



『彼』の走り方だ…。

 
でも、『彼』の走り方は独特で、陸上部で同じ走り方の人はいない。


ということは…







あたしの大好きな『彼』は聖くん…?



『頭がよくて

静かで

陸上が大好きな人』


あたしの頭の中の『彼』は

数秒のうちに

渡野聖によって、簡単に崩れ去った。