体育館裏はグラウンドと違って、日陰が多い。

夏の夕方なのに、どこかひんやりしている。


「…それで、話って?」


聖くんは、あたしの手を離す。

あたしに背を向けたまま。 


「……えっと…、あたし…」


頑張れ、あたし……!




「ごめん」





「………え?」


今の…聖くんが…謝ったの…?


何で……?


「鈴、ごめん。俺、無神経にあんな事言っちゃって、悪かったよ。」


あんな…事…?


『俺、鈴なら頑張れるって信じてる!』

『あたしは、もう周りの期待に応えるのは、限界っ!!!』

………あ。

あれは、あたしの八つ当たりなのに…?


「あの後、いろいろ考えたんだ。何で、鈴が怒ったのかとか…。…でも、やっぱりよく分かんなくてさ。…ほら、俺バカだから」


ハハッ、と聖くんが笑う。

渇いた笑い声だった。


「…だから、もしも、今日鈴が来てくれたらマネージャー、またお願いし直そうかなって…。…ダメ…だよな?」


聖くんは、悲しそうに言った。

まるで、断られることを前提に話してるみたいだった。