…それに、同級生と会話なんて、何年ぶりだろう?

友達のいないあたしの『普通じゃない事』を、聖くんは『普通』にする。


それが少し、嬉しくて──…。


あたしの中で、聖くんの存在が少しだけ大きくなった。




「ね、俺の話、聞いてる?」

「えっ?」


聖くんに顔を覗き込まれて、ハッとする。


「あ…。ごめん。何も聞いてない」


あたしの返事に、聖くんはハハッと笑った。


「何の話?」

「なんで、ピアノ教室やめたの?って聞いたんだけど…」

「…え」



予想してなかった質問に、体が固まった。



「そ、それは……」

「それは?」


汗が気持ち悪い…。


気温が、急に上がったみたい。


煩いセミが鳴いている。


炎天下の中、あたしは下を向いてただ立っていた。

それを、聖くんはただ見ている。


……すごく、惨め。


あの時みたい。