あたしは、上原 鈴(ウエハラ スズ)。

高校3年生。

勉強は上の下で、運動は下の中くらい。

ごく普通の女の子。




『あんたなんて、大嫌い』


『才能があっても、問題起こされるのは困りますから…』





「………っ」


ピアノを弾くたびに、思い出すあの光景。

思い出すと、どうしても指が止まる。

思うように、指が動かなくなる。



……あんな光景、思い出したくないのに。



1つ大きな溜め息をついて、後ろを振り返る。

目の前には窓がある。

窓からグラウンドが見える。

陸上部が、



君が走っている。