「あの…マネージャーって何をすれば…」
「放課後練習に付き合ってもらえたら…」
「放課後練習?」
「えっと、明日から部活が終わる6時から土日含めて、タイムを計ってもらえたら…」
6時から!?
土日含めて!?
……大変そうだな。
「……それと」
まだあるの?!
「『鈴』って呼んでいいですか?」
「……うん」
「タメ口でいいですか?」
「……同級生だし、いいよ」
あたしの答えにホッとしたように、聖くんは笑った。
「あ、鈴、家まで送ろうか?」
「平気」
「鈴、ケータイ持ってる?」
「うん」
「じゃ、鈴、メアド教えて」
「…ねぇ」
「何、鈴?」
ケータイを取り出しながら、聖くんに言った。
「あたしの名前、呼びすぎ」
「嫌?」
不思議そうに尋ねてくる聖くん。
その顔を見たら、なんだか顔が熱い気がして下を向いた。
「……別にいいけど」
「俺、ずっと前から好きだったんだ」
「え?」
「鈴のピアノ。音が綺麗で、聴いてたら走りたくなる音で好き」
あたしは聖くんから目が離せなかった。
「だから、そんな音出せる人に名前呼ばれて、タメ口で話せて、呼び捨てできて…。嬉し過ぎて、変人になってんの」
聖くんは、そう言って笑った。
その笑顔がすごくまぶしかった。
…なんで、あたしのピアノがそんなに好きなの?
あたしなんかが弾くピアノなのに。


