「一宮くん、送ってくれてありがとう」
「別に。帰るついでです」
「じゃ、また明日ね!」
一宮くんに手を振り、家の中に入ろうとしたとき。
「あ、白雪さん」
一宮くんがなにかを思い出したように私を呼び止めた。
「ん?どうしたの?」
「…………」
「……一宮く……きゃっ!」
一宮くんが急に私の腕を引いた。
そのせいで顔と顔の距離がぐっと縮まる。
「あ、あ、えっと、一宮くんっ」
突然のことに顔を赤くなる。
すると―――
「今日やったとこ、ちゃんと復習するんですよ?」
耳元でそう囁いた。
な、なんじゃそりゃ!?
それを言うためだけに……。
「じゃ」
一宮くんはニヤリと笑って、帰っていった。
一宮くん……今の絶対わざとだ!!!悪魔!!!
ほんっとイジワルなんだから!
頭の中で文句を言いながら、家に入った。