「帰りますよ」




「え?」




「どうせ同じ方向なんですから一緒に帰った方が安全でしょう?」




「う、うん!ありがとう!」




こういうとこだけは優しいんだから。




「ねぇ、一宮くん」




「なんですか?」




「一宮くんって………誰かを本気で好きになったこと……ある?」



校門をくぐって、私はなんとなく聞いた。



「誰かを本気で好きになったこと……ですか」



「あるの?」



一宮くんって、あんまり恋愛に興味なさそうだけど……。



「んー……ない、ですね」




「ないのか!なんか想像通り!」



恋愛なんかするヒマあったら読書って感じだもん!



「でも」



私が納得していると、一宮くんが言った。



「え?」



「これから、好きになるかもしれないです」



「え!?気になる人とかいるってこと!?」



誰なんだろう?
すっごく気になる!!!



「さぁ?秘密です」



「えー!ケチ!!!」



「ケチじゃないです」



結局、それからはなにも教えてくれなかった。