「好きだったからじゃないですか」
「……へ?」
「アイツ……瀬戸歩のことが……本気で好きだったからじゃないですか?」
私……歩のこと……。
歩と過ごした楽しかった日々を思い出す。
告白されて、付き合って、抱き合って、好きって言い合って……。
束縛されてても……やっぱり歩が好きだったのかな……?
心のどこかではまだ歩を好きなままだったんだ……。
そんなことを考えていると、一宮くんが立ち上がった。
「………アイツのことなんて、忘れてしまえばいいんですよ」
そう言って、普段のイジワルな一宮くんとは思えないほど、そっと優しく私を抱きしめた。
「い、いちみやく……っ」
「泣いて……忘れてください」
………え?
「ほら、はやく泣いたらどうですか?」
一宮くんのその一言で私はまた涙が溢れてきて、思い切り泣いた。



