呼吸を整えながら歩いていると、隣のクラスの中から男女の声が聞こえた。
歩のクラスか……。
「も~!歩くんダメだって~」
「いいじゃん。誰もいねぇし」
「恥ずかしいよぉ………」
………歩の声だ。
なにしてるの?
あんだけ私に執着してたくせに、もう新しい彼女?
……ワケわかんない。
私は歩のクラスの横を走って、自分のクラスに入った。
自分の席から筆箱を取ると、また筆箱を持って選択教室まで一気に走った。
私だけだったんだ……歩を好きだったのは。
浮かれてた私ってバカみたい。
ほんっと私って男の子を見る目ないなぁ。
自分に呆れながら、選択教室に駆け込んだ。
「意外に早かったんですね。………って、どうしたんですか」
「へ……?」
一宮くんに言われて気が付いた。
自分が涙を流していたことに。



