「ありがとう、桃乃っ」
「う、うん!」
笑顔をつくってそう言ったものの、私は心のどこかで焦っていた。
でも、考えないようにした。
これ以上考えたら、頑丈にフタをした自分の気持ちが溢れてきそうだったから。
未唯ちゃんは一宮くんが好きなんだから。
「あっ」
すると、未唯ちゃんがある方向を見て声を出した。
「ん?どうしたの?未唯ちゃん」
「あれって歩くんと花織って子じゃない?」
未唯ちゃんの指さす方向を見ると、歩と彼女さんが仲良さそうに手を繋いで歩いていた。
そして2人は私と未唯ちゃんの前を歩いていった。
「うわっ、なにあの花織って子。香水つけすぎじゃない?前通った瞬間、すっごいキツイ匂いが……」
未唯ちゃんは険しい表情をした。



