「えー、このケーキの個数をxにおいて考えると………」
先生の話なんて耳に入ってこない。
てか、授業自体全く頭に入ってこない。
「はぁ……」
こういうときはカボチャプリンのアイスのことを考えて……。
頭にカボチャプリンのアイスを思いうかべる。
……はずだったんだけど。
「…………」
目の前に一宮くんがいて、一宮くんのことを考えないワケがない。
よく考えてみれば、一宮くんが好きだって自覚する前も今も一宮くんのことを考えない日なんてなかった。
気が付けばいつも、一宮くんのことを考えていて……。
そんなに好きだった人を忘れるには想像以上の時間が必要なのかもしれない。
「あの」
「あっ、は、はいっ」
一宮くんが急に振り向いて話しかけてきたから、驚いて体がビクンと跳ねた。
一宮くんに話かけられると、少しでも期待してしまう。
また、放課後にあの場所で会おうって言ってくれるんじゃないかって。