キスはたった一瞬のことだったけど、私には数分に感じられた。
「………い、一宮く……っ」
「………すいません。今のは忘れてください」
そう言った一宮くんの目はなにか思うことがあるように見えた。
けど、聞くことができなかった。
「な、なんでキス………」
一宮くんの考えてることが本当にわかんない。
なにを思って、なにを考えて、キスしたの?
「………特に意味はありませんから。ただの気まぐれです」
一宮くんの言葉はなぜか胸になにかが突き刺さるような感じがした。
なに、この気持ち。
なんでこんなに苦しいんだろう……。
「……そっか」
一宮くんのことだもん、こういうのはあっても仕方ないことだ。
なのに……。