階段に着くと、いつも通り読書をしている一宮くんがいた。
「ごめん、遅くなっちゃって………」
「………なにしてたんですか?」
本から目を離さずに問いかけてくる。
「いや、ちょっと色々と………」
一宮くんに柴崎くんのこと、言う必要はないよね?
柴崎くんだって自分が告白したこと、人に言われたくないだろうし。
「へぇ、僕に隠し事ですか」
「いや、そんなつもりじゃ……!ただ、あんまり人には言わない方がいいことだから……」
「そう、ですか」
あれ……?
いつもみたいに、強引に聞き出さないんだ?
珍しいな………。
「柴崎蒼」
「えっ?」
いきなり出された名前に肩がビクンと反応する。



