隣の席のカフェ山君

テーブルの上に置かれた鞄には、


『朝日ヶ丘中学校』


とローマ字で書かれていた。



あ、私立の朝日ヶ丘の人なんだ。




このへんでも有名な中高一貫の中学校だった。




いわゆる進学校。




優等生か。優等生の中学生でもカフェで勉強したりするんだ。



机の上に勉強道具を広げているその人物は、私の視界の隅に入る左手の雰囲気からして、


たぶん男子だろうな。



だけど、わざわざ顔をあげて横顔を拝見するのもおかしいし。





私はそのまま勉強を続けることにした。




「ご注文はお決まりでしょうか。」



店員さんが朝日ヶ丘中学校の男子に聞いた。




「グレープタイザー」



「かしこまりました。」




おぉ!


その男子はメニューも見ずに一言そういった。



カフェ慣れしてるな、コイツ。


私はひそかに心中でつぶやいた。