氷が私の気持ちに気付いてくれたか、画面が消えた。
 と思いきや、今度はフリースケーティング。

 氷は私の気持ちなんて分かってないようだ。
 また、私が嫌になる映像を流す。


「女子では世界で初めて決めた四回転トウループ。さあ、跳べっ!美ら(チュラ)ジャンプ。」

「降りて!」

 後ろ向きで、右足を外側に傾け、左足のつま先をついて踏切。
 高く舞い上がって、左回りに回る。

 一、二、三、・・・半!

 姉弟子の願いも虚しく、回転不足で転倒。
 器用な選手は回転不足で着氷しても、氷の上で不足分回り切って転ばない。いわいるグリ降り、グリンコと呼ばれることをするが、華音有はほぼ必ず、回転不足で降りると転倒する。

 回転不足は九十度以上百八十度未満の回転不足は、基礎点の七割の基礎点を、それ以上の回転不足は一つ買い点数の少ないジャンプと同じ基礎点を、いわいるダウングレードされる。
 転倒は、たとえジャンプ以外でも転倒しても、全体からマイナス一点引かれる。


 会場が失望に包まれ、華音有をきつくきつく縛っている。

 この後のトリプルアクセルも失敗し、それからは、もう、見るに耐えられない。

 華音有を幼き日から知り、取材してきた私は、たまに彼女が自分の妹のように感じる時がある。
 そんな“妹”が大好きなスケートをして傷つく姿を、もう、もう、見たくない。