素晴らしすぎて、拍手だけでは足りない。
 でも、今立っているから、立ち上がってスタンディングオペレーションはできない。

 スタンディングオペレーションを受けると言うことは、フィギュアスケート界ではいい演技をした人に贈られる、名誉なことだ。

 今の姫は、いい演技以上のいい演技。どう伝えればいいか。

 どうだ、ジャンピングオペレーション。

 何度も跳び上がりながら拍手する。

 へとへとになるまで飛んだら、その場に座り込んでしまった。


 ふと視線を姫にやると・・・姫がいない。

 どこに行ってしまったのか。

 バランスを崩したら、全身が氷に叩きつけられるところまで、氷の近くまで行く。

 今のは、幻だったのか。
 元の雪野原に戻っている。スケート靴で滑った跡、トレースがない。

 ああ、今の演技は、幻だったのか。

 演技に酔いしれていた自分に、虚しさを覚えた。

 ふと、氷を覗き込むと、映っていたのは、自分の姿では、無い。

 えっ。

 姫路華音有(ヒメジカオリ)の姿。姫の姿に少し似ているが・・・。
 彼女は、フィギュアスケートの選手。姫の演技を再現できるとしたら、彼女しかいない。
 だが、まだまだ、姫に及ばないところがある。

 今のは、一体なんだったのだろうか。