銀盤の国のお姫様

 メロディーが変わった。

 美しさの中に、力強さを感じさせるメロディー。

 滑りからも、懸命に大きくなろうとする花の力強さが感じられる。

 後ろ向きに右足のエッジを外側に倒し、左足のつま先をついてジャンプ。
 少し小さめに舞って、左回りに回って、一二三。後ろ向き、右足で着氷。
 
 テンポが少しゆっくりになったところで、また左足のつま先をついてジャンプ。
 左回りに回って、一二三。後ろ向き、右足で着氷。

 見事な3トウループ―2トウループ。

 しかも、体力が落ちるはずの後半で決めるとは。

 いくら、子供とはいえ、この年齢でこんなことができるとは。

 
 あっけにとられるのはまだ早かった。

 後ろ向きの助走から、左足のエッジの内側で踏み切ってジャンプ。
 左回りに回って、一二三、右足で着氷。

 三回転サルコウ・・・。

 いくら、二番目に難しいジャンプとされていても、一番最後、しかも、三回転で決めるとは。
 この年齢では難しい。

 さすが“沖縄の天才少女”、華音有。
 
 観客の中には拍手をやめる人までいるくらい、素晴らしい演技。

 でも、まだ早い。
 これで、ノービスBのルールで定められているジャンプの数に達しただけ。

 花の歌は、まだ歌い続けている。