銀盤の国のお姫様

 また最初のメロディーが流れる。
 演技も後半に突入。

 だいぶ緊張がときほぐれたせいか、笑顔がまぶしく見える。

 お花畑に太陽が差し込んだようにみえる。

 両足を膝を曲げずにまっすぐ180度に開く、イーグル。

 刃を背中側に倒していて、倒れたら尻餅つきそう。
 いや、頭打ちそう。

 それでも、顔を上げて、気持ちよさそうな表情で、両手を広げ、弧を描きながら進む。

 この技自体の基礎点は持っていないが、印象に残ったり、難しかったりすると、芸術点で評価されることがある。

 きれいなイーグル。
 拍手がわきあがる。

 
 足を元に戻し、少し呼吸を整える。

 そして、

 チャララ~ン~♪

 分散和音の音に合わせて、今度はトリプルサルコウ。
 
 サルコウジャンプの踏切りが、小さな竜巻に見えた。

 きっちり回り切って、きれいに着地。

 拍手の竜巻が、会場のいたるところから巻き起こる。

 それによって客の心を完全に、演技に引き込んだ。

 くるりとコンパスのように一周回って、勢いを一回落とす。

 その時、一番前で座っていた老人と目を合わせた。
 老人は、ニコリと笑った。