銀盤の国のお姫様

 ここで曲調が変わり、テンポが少し早くなり、力強さが増す。
 ほんの少し、不気味で、悪い予感がするが。

 明るく輝いている顔に、自信も見えてきた。

 高く舞って、左足で着氷。
 Tの字の体勢で時計回りで回る。普通、スピンは反時計回りだが、幼い頃は時計回りで回るほうがやりやすかったらしい。
 そこから、ドーナッツスピン。軸がぶれてなくて、きれいなスピンだ。

 四回転ほどまわって体勢を崩す。

 お客さんからの拍手は礼儀からしているとは思えない。
 とても、小学四年生とは思えない、美しいスピンだから。


 つなぎの演技で、両腕をいっぱいに伸ばして、力強く、花を咲かす。
 一厘、二輪、三輪。
 それぞれ、違う花のように見える。


 分散和音の音に合わせ、魔法をかけるように、右手を斜め前へ伸ばす。

 魔法にかけられた隙に、

 2ルッツー2トウループー2ループ

 風が通り抜けたようなメロディーに合わせ、三連続ダブルジャンプ。

 映像で見る人でさえ、心の中に風が通り抜けたように感じる。
 
 心が舞い上がっているうちに、華音有の動きは一時停止。

 観客の拍手も一時停止。