銀盤の国のお姫様

 薄いピンクをベースに、ラインストーンでたくさんの花が描かれていて、まぶしい光を放っている。

 光を、視線を、拍手を浴びてる華音有は、美しさに加えて、何かをまとっている気がする。

 その、まとっているものは何か。分からない。

「華音有ちゃんは、まだ小学四年生です。
 しかし、早くもその才能に注目が集まっています。
 ・・・・・・・」

 陽一による華音有の紹介の間中、リンクをゆっくり大きく一周する。
 それにしても、紹介が長い。
 ので、省略する。

「・・・・・・。それでは、披露してもらいましょう。
 曲は、ランゲ作曲『花の歌』です。」


 一気に会場中が静まり返る。

 ゆっくりと最初のポーズをとる。

 その前年に、特例で全日本ノービスB選手権に出たときに使った曲。
 この間の、新人発掘合宿の成果を披露するショーでも滑った曲。 

 たくさん人前で滑った曲。

 でも、この演技一つが、リンクの存続がかかっている。そう悟ったのだろうか、わずかに、足が震えている。

 緊張を抑えたくても、抑えきれない。

 こんな時、音楽がかかってくれば・・・

 華音有は、目をつむった。