銀盤の国のお姫様

 小まりの話をしていたら、本人の姿を見つけた。

 小まりも準備体操中。

 ある程度の緊張を保ちつつ、余裕そうな表情。
 怖そうな華音有とは対照的だ。

 華音有と、小まりは、同い年と日本人とスケートをやっているところ以外、見た目、性格、スケートの特徴、ありとあらゆるものが対照的。
 対照的なものがありすぎて、書ききれないほど。

 それでも、華音有と小まりは普段は仲良しだ。
 
「あっ、実城さん。」

 小まりに気付かれた。
 
 邪魔になったらいけないと思い、その場から離れようとしたが・・・
 遅かった。

 黒髪をボブに切って、少し内側にカールがかかった髪を揺らしながら走ってきた。

「今日もお疲れ様。」

 と言って笑いかける。
 これが、大事な試合前なのかとついつい疑ってしまう。

 いくら、最終滑走で、出場選手が小まりを含めて三十人いるからって、こんな感じでいいのか。

 苦笑いを表に出さないようにしながら、小まりの話を聞くとするか。