「別に憂樹が謝ることじゃない。…あとで早馬が確信犯かは聞かなきゃだけどさ」
未胡は冷静になったようで、こっちを向く。
「次は絶対こんな風に流されちゃだめだからね」
「はーい…」
「じゃ、私は早馬と話あるから。先に行ってて?」
「わかった」
そのまま階段を下りる。
「あ、奈田ちゃんだ」
その声にびっくりして振り向くと…
「先輩ですか、よかった」
「何がよかったのかは敢えて聞かないでおくよ」
そう柔らかい笑顔を見せたのは、近所に住む兼原慎也(カネハラ シンヤ)先輩だった。
さっき未胡と話してた人であり───未胡の好きな人で。
「そういやさっきのって彼氏?」
「え、っと…内緒です」
「そっかぁ、ついに奈田ちゃんにも彼氏かぁ」
「先輩、人の話は聞くものです」
「奈田ちゃんも言うようになったねぇ」
なんだろう、兼原先輩はすごくほのぼのする。
このゆるい笑顔のせいなんだろうか。
ゆるい笑顔と言えば…早馬くんもなのかな。
「奈田ちゃん?顔にやけてるけども」
「はい!?え、あ、ありがとうございました」
「奈田ちゃん落ち着きなよ一回」
パニックになってる私の頭に手を置く。

