「俺、からもよろしくお願いします…」


隣を見ると、息を切らしてここまでやって来た様子の早馬くん。



「……もしかして、ここまでこの子が生き生きとしてるのはそのせいかな」



「すんません、勝手に野良猫をこんな風に育てるのが良くないってのはわかってたんすけど…」



早馬くんは優しい。


多分、お腹をすかせた1号を放っておけなかったんだ。



「でもね、君たち。その気持ちはよくわかるんだけどね?」



決まりごとは決まりごとでさ。



そう言われると、早馬くんは言葉に詰まる。



「私が、引き取るって形にしたら、ダメですか?」



「それなら問題なし、ですよ」



保健所の人が返す。



「なら、1号は私が引き取ります」



「はい。わかりました」



それだけ返して保健所の人たちは帰っていく。



そう言えば…早馬くん?


さっきから一言も喋らない彼を見ると



なぜか立ち尽くしていて。




「いい、の?」



「全然。これで1号が救われるなら」



ダンボールから1号を出す。



「また───また夕方1号連れて橋の下にいるから。だから、また会おう」




そう言うと、早馬くんは



「ありがとう」



と笑顔で言った。




ドキン、と心臓が音を立てたのは、きっと気のせい。