…うーん。


「いない、か…」


独り言のように呟く。


私はふと、向こう側の歩道を見つめる。



『保健所』


とある車が────置いてある。




そしてその車にむかって、歩いていくおじさん。



「あ…」



そのおじさんが持ってるダンボール…



「 待って!」


「奈田!?」



車通りが少なくなったことを確認して、



急いで向こう側に走る。



「?君、は?」


「その箱の中って…野良猫、ですよね?」



「う、うん…ダンボールにいて、あんなところで死んでもらっても処分に困るし…」



おじさんの言いたいことはわかる。



「お願いします!」


「え?」


「私『たち』、が面倒ちゃんと見るから…だから、その野良猫を私にください!」



そう言って頭を下げる。