「母さんさ、俺が6歳の時病気で死んだんだ。元々、体の弱い人だったらしくてさ、親父との結婚も周りからずいぶん反対されたらしい。」 俺を見つめる美桜の視線がある。 「それでも反対押し切って結婚してさ、兄貴が生まれて、俺が生まれて…ささやかだけど幸せだったって。親父がたまに酔って話すんだ。」 きっと、本当に幸せだったんだろうと思う。 寂しそうに、遠い目をして話す父親の姿を思い浮かべた。 記憶の中の母さんは、いつも優しく微笑んでいる。 親父はきっと… まだ母さんを愛しているんだ。