次の瞬間…
止める間もなく、鈍い音が響く。
人が人を殴る音。
こんなに近くで聞くのも、見るのも初めてだった。
近寄ることすらできない。
私には何もできない。
その時、男の手に光る物が握られているのが見えた。
通りすがる車のヘットライトに照らされて、キラキラと反射して見えるそれは、間違いなくナイフだった。
「あれっ…ヤバッ。そういう物持ってるの…?」
明らかに焦ったようなハスキーな声が、私の耳にも聞こえていた。
ゆっくり後退して、ナイフを持った男との間をとるように振り向く。
「おいっ!お前、早くここから逃げろ!」
そう叫んだ。

