ゆるこい




そっけない態度のまま、前を歩き始める悠。




どうしてだろう、誤解は解けたのに不機嫌オーラが消えてない。




「悠、告白の女の子、そんなにしつこかったの?」




「…それもあるけど。杏子、自分に非があるって考えない?」




チラ、と視線を交えても、歩行速度は変わらない。




ああ、怒ってるんだなって。




こんなに怒ってる悠を見るのは久しぶりだなあって。




「渡辺さんとお話ししたついでに、勉強教えてもらうことになっただけだよ。悠、今まではこんなことじゃ怒らなかった、よね?」




「僕は今、独占欲に支配されているらしい」




「……え、それって」




クルッと振り返った悠は、やっぱり不機嫌で。




独占欲、なんて言葉が悠の口から出てくるなんて思わなかった。




今までは私が何をしたって、すまし顏で普通に話してた。




嫉妬なんて言葉を知らない、そんな感じだったのに。




「悠、嫉妬するんだね」




「なんでだろうね、さっきの子の言葉が気に食わないのかな」




「告白してきた子?」




ズボンのポケットに手を突っ込んで、斜め下を見る悠。




子供がよくやる仕草、所謂カワイイ。




「杏子に対する僕の対応、僕に対する杏子の反応。淡白で好き同士だとは思えないってさ」




「……そうかもしれないけど。でもさ、私以外の女の子に喋らないで、笑いかけないで。アドレスなんて論外、私だけを見て。なんて、そんな雁字搦めの鎖に縛られるのはヤダよ」




「僕だってそんなのは御免だ。そこじゃなくて、二人で居る時間が少ないって。弁当と帰る時だけじゃ全然足りないのが普通らしい」




そんな普通なら、いらないのにな。




悠が女の子に言われた言葉に固執する意味が、私には理解できなかった。




誰になんと言われようと、付き合っている事実は変わらない、好きだという事実だって変わりっこない。




なら、なんだっていいじゃん。




「僕はさ、告白のたびにそれを持ち上げられるんだ。だからさ」




悠はツカツカと寄ってきて、顔を耳に近づける。




吐息が耳にかかって、なんだか擽ったかった。




「一回くらい、みんなの前でちゅーでもしとく?」