ーーーーーピロピロリン
あれから何時間も経ち、外は暗くなりはじめていた。
依然として甘い空間から引き抜こうとするかのように、携帯がメールを知らせる。
「悠、ちょっと離れて」
「やだ」
お腹に絡みついた腕を外すのに格闘し、結局は力で負けて不自由な身体のまま携帯を片手で引き寄せる。
表示されている名前。
ーーーーー渡辺さん
「まっずい…!」
背筋が凍る。
全身の血が逃げるように消えていき、まさに顔面蒼白といった…。
フルスピードで渡辺さんに電話をかける。
メールなんてまどろっこしい方法は焦るだけだ。
「ーーーーもしもし?」
渡辺さんの声はいたって普通で、それがまた胸を締め付けた。
「あの、本当に申し訳ないんですが、すっかり、綺麗さっぱり、忘却の彼方といいますか…」
「ああ、やっぱり。じゃあ今日は無しとして、どうする?また別の日に教えようか?」
「本当に申し訳ございません…。あの、今度は教えてもらうのと同じ日に償いというか懺悔というか」
「いいよそんなの。気にしないで」
「いやでも…。せめて何か」
「そうだな、じゃあ明日、何か奢ってもらおうかな」
「はっ!了解いたしました!」
「うん、じゃあまた明日」
「本当に申し訳ございませんでした!」
「いや、気にしなくていいって。それじゃあね」
機械的な電子音が渡辺さんとの糸が切れたことを明確にする。
いつでも優しい渡辺さんは怒らなかったけど、本当ならこれは一日中懺悔しなければ到底償いきれない…
「ねーえ、渡辺さんと明日遊ぶの?」
「…懺悔です。今日約束をすっぽかした償いをしに行きます」
「あー、やっぱり忘れてたのか。てっきりもう断ってるものかと思ってたよ」
「え、悠は覚えてたの?」

