「できた!悠、終わったよ!」
「おはよ」
格闘すること半時間。
ようやっと、ついに、クリア!
悠は皮肉っぽいけど、私の喜びは悠の言葉一つで消えたりしない。
「ねえ、今度は二人でやるのがイイ」
「ええー。杏子弱いから組んだら負けるじゃん」
「なによう。勝つのが全てじゃないって格言、あったでしょー」
「そうだっけ」
とぼける悠も、案外楽しそう。
ゲームなんて楽しきゃいいんだ。
結局は悠の根負けでペア戦をやることになった。
ゲーム機を握り潰しそうなくらい、白熱してる、ハズなのに。
「ちょっと杏子、ジャマしないでよ。なんで何もないとこ走り回ってんの」
「だ、だって火の玉が…!ああああ!」
「バビルサじゃないんだから、自滅しないでよ。弱すぎ」
「バビルサってなに?あ、まって、話かけないで、ジャイアントパンダがこっちにくる」
「バビルサってのは、ツノが後ろにクルンってなるタイプのだから、自分のツノが伸びすぎると頭に刺さって死んじゃうの。あくまでウワサだけどね」
「ちょ、ああ!話かけないでよ!ジャイアントパンダが集中攻撃してきた、弱いものいじめ!」
「これ、ジャイアントパンダじゃないからね」
カチャカチャいうゲーム機は、自分の思い通りに動かない。
目の前のジャイアントパンダに萎縮しちゃってるみたい。
「杏子、僕に任せろ!」
「死んでから言わないでよ!」
悠の操るゲーム機は、私のと作りが違うんじゃないかと錯覚させる。
そのくらい、画面の悠がジャイアントパンダをフルボッコにした。
「うぃん!すごい、瞬殺!」
「杏子、死んだよね、自滅だよね」
「うるさいなあ。飛び蹴りしようとしたらタイミングが合わかっただけで…」
「結果、突っ込んでって死んだよね」
ゲーム機を放った悠は、ナゼか杏子の両肩を90度回転させようとした。
「イテテテ。な、なに?」
「んー。昨日のちゅー、以外とクセになるってゆうか」
「隠れキス魔だったのね」