「えー、これから新しいこのクラスで頑張っていく訳ですけども、
皆で力を合わせて一年やっていきましょう」
新しい担任は真面目そうな女の先生で、短いヘアーと眼鏡がよく似合う、しっかりした人だった。
歳は四十代半ば…くらいかな?
子供も居そうだなー…
教科は美術らしいけど、確かにインテリっぽい顔してるかも…。
…何処に住んでるのかな??
私は先生の顔を
まじまじと見つめながらどうでもいい考えを次々に働かせていた。
それと言うのも、私は一番端の列の後ろの席だから
ぼーっとしながら
考えごとをしていても、
誰からも注意される
心配がないのだ。
この席からは、新しいクラスの様子がよく観察できた。
一見した所では、
明るい子の少ないように思えるクラスだった。
大人しそうな生徒が多く机に顔を伏せたり、窓の外を眺めている子がほとんどだった。
私語がない代わりに、
先生の話を聞く子も少なく、かといってピリピリした空気が漂うでもなく
何処となく奇妙なクラスだった。
けれど、教室全体の
妙にのんびりした雰囲気が心地よくて、
私はほっとしていた。
この学級なら、
自分らしく居られそう。
一年生の頃の、気の休まらないクラスが思い出された。
無駄に騒がしくて、皆が自分達の縄張りを必死に張り巡らせているような
つまらないクラスだった。
麻美が居なければ、きっと毎朝教室に入ることさえためらっただろう。
それに比べれば、
新二年クラスはオアシスのようなものだった。
少し安心した。
