私は寝たままでは失礼と思って、ゆっくりと身体を起こした。



「君はまだ、寝ていた方がいい」



「何かお礼がしたいです。連絡先を教えてください」



「礼なんていいよ。俺は当たり前のコトをしただけだ…」




彼はやんわりと私の申し出を断って背中を向け、救護室を出て行った。



その当たり前のコトが出来ない人達は大勢いるのに。


線路の上に倒れ込んだ私の元に電車が突っ込んで来たら…



私は死んでいたーーー・・・


彼の咄嗟の行動が私の命を救った。彼は命の恩人。


彼の見返りを求めない深い優しさに心惹かれ、いつまでも私の心の中に彼の存在が残った。


そしてそのまま…初恋の人となった。