「…なに」
あたしの視線に気づいたのか、ちらっと見下ろしてくる俊くん。
目があったことにびっくりして、あたしは勢いよく下を向いた。
「…なんだよ」
そんなあたしの反応が気にいらないのか、不機嫌そうな声を出す俊くん。
だ、だってだってだってっ…
そんなかっこいい格好でこっち見られたら、見れるわけないもん!!
ただでさえ格好いいのに、浴衣って!!
もう、恥ずかしすぎるよ~!
普通、花火大会って女の子が浴衣着てきて、男の子が可愛いじゃんってなるものじゃないの!?
あたし達、思いっきり逆じゃん!!
俊くんはあたしの浴衣に何にも触れてくれないしっ…!
もしかして、こんなにドキドキしてるの…あたしだけ、なんてことないよね…?
「…人多いな」
そんな声が上からして顔をあげると、周りには浴衣を着た人たちがチラホラ。
俊くん、人ごみ好きじゃないしなぁ。

