あたしはスタスタとお店を出て、映画館のほうへと進む。
ふんだ!
こんなことで拗ねると思ったら、大間違いなんだからね!
「さーくらー」
ふざけてるのか、そんなあたしの後ろを笑いながらついてくる俊くん。
「さくらちゃーん」
俊くんがあたしを‘ちゃん付け’で呼ぶときは、たいていふざけてる。
っていうか、ふざけてないとそんなふうに呼ばない。
いつも呼び捨てだからね。
「木下さーん」
俊くんを無視して、あたしはスタスタと歩いていく。
こんなところ、優子に見られたら絶対笑われちゃう。
たかがCDごときで、こんな。
…ほんと、CDだけなのに。
あたしはゆっくり立ち止まった。

