医師からすれば、“霧って誰!?”といった感じだが、舞い上がっている二人には何を聞いてもぬかに釘。

さらに、二人を押し切って部屋を出ようものなら、


『まぁ、先生は恋人の逢瀬を邪魔するんですか!?』


と、まるで医師が悪物かのように言われてしまっては動きようがなくなり、仕方なく今に至るというわけである。

せめて、目覚めた時の患者の様子を確認しようと二人に尋ねたものの、ちゃんとした答えが返ってくるのか、それ以前に果たして自分の言葉をしっかり聞いてくれていたのかどうかいまいち不安な医師であった。

しかし、その辺の不安は思い過ごしのようで、思ったよりもしっかりとした答えが返ってきた。


「あ、そうですね。
別に変わったところはなかったわ、ねぇ、陸くん」

「ああ、気分も良さそうだったし」

「そうですか」