そんな露にできるだけやさしく声をかけるけど、混乱している様子の露は僕の声にも耳を貸さず、そっと掴んだ腕を強く振り払ってきた。


「や、やだっ!あやちゃん!!」

「露……」


綺さんたちを追いかけようと、露は必死にベッドから降りようと身を乗り出し、その手を2人の方へ伸ばす。

そんな露を見て、綺さんと陸さんは戸惑っている様子だったけれど、そのまま二人は扉へと歩みを進めた。


「あやちゃん、あやちゃん!」


そんな露の肩を掴み、なんとかなだめようと露の名前を呼び続けるけど、目にいっぱいの涙を溜めた露の耳に、僕の声はなかなか届かない。


「露、露……」


露のこの反応から見て、今の露は何も知らない無垢な……そう、まるで子どものような状態だ。

露がどれだけ僕が怖くても、それがどんなに悲しくて淋しいことでも、僕が露を怖がらせてはいけない。

僕は、肩を掴んでいた腕を背中へと回し、そっと自分の胸に露を抱き寄せた。


「露。
大丈夫、怖くない。だから、泣かないで……」

「……っ」