「意識もはっきりしていますし、大丈夫でしょう」

「露ちゃん……!私たちがだれだかわかる!?」


陸さんの隣に並び、露の手を握る綺さん。

露はさまよわせていた視線を綺さんに定めると、


「あやちゃん……りく、く……?」


小さいけれど、はっきりと、2人の名前を口にした。


「露ちゃん……!よかった」


露のその反応に、綺さんはその胸に強く露を抱きしめる。

よかった、本当に……。

頭を強く打っていたからもしかしたら脳に障害出るかもと勝手に危惧していたけれど……。

露の記憶もしっかりしているし、僕の思い過ごしのようで安心した。


「露ちゃん、ほら!霧くんよ。
霧くん、ずーっと露ちゃんの側で心配してくれていたのよ」


露から体を離した綺さんが、僕を露の側へと歩み寄らせる。


「露……」


露の体に腕を伸ばし、その小さな手のひらをこの手で握り締める。


「露……よかった。
痛い思いをさせてしまって、すまなかった」