「何心配そうな顔してんだよ、さっきのはあれだよ
母親がむいてくれたリンゴを久々食えるもんで頬張ったら
のどに詰まっちまってさ」
変なウソついて何もない表情して
「やっぱ勢いよく食うもんじゃねぇなリンゴは」
無理やり笑って辛いことを隠してる。
自分が一番苦しいはずなのに、
誰かに頼りたいはずなのに
「沙良、どうしたんだよ
今日元気ねぇな」
そうやって彼はいつも人の事を考える。
情けない。
好きならなんで気づいてあげられなかったんだ。
一昨日はずっと一緒にいたくせに
どうしてそんなウソが分からなかったんだ。


