こうやって……誰かがトーコさんにチョッカイ出したり、彼女を好きになったりしても、
堂々と「ダメだ」って言えないのが、正直一番悔しい。
ゆーじんさんには「俺のだ」みたいな啖呵切ったけどさ、
あれはあの人がこちらの“事情”を知っているから特別に出来たことだ。
俺とトーコさんに血縁関係がある以上、おおっぴらに動けないのは、当然だ。
「はー……」
もう一度ため息をついた時、
「安西」
ポンっと肩を叩かれ振り返ると───俺の頬にぺたっと冷たいなにかがくっつけられた。
「───わっ! な、なに??」
「くっ、……まぬけな顔」
笑いと共に、杏崎から「あげる」とお茶の小さなペットボトルを手渡される。
さっき頬に触れたのは、これらしい。
俺の隣に「いい?」と断って座った杏崎は、
「安西、落ち込んでんだ?」
俺の顔を覗き込む。
「……なにが」
なんとなく笑い口調の杏崎に、つっけんどんに返すと。
「分からなくもないけど、仕方ないじゃん」
「……だから、なにが」


