叶わぬ恋。





「え~、なんだ。期待してたのに」


「あら残念!」




「しょうがねーから他のやつらに見せてもらうか!」

「いや・・・宿題なんだから自分でやろうよ」




そうだ・・・。鈴森くんに聞きたいことあったんだった。



隣で、肘を頬につけながら顔を机につっぷせて
ケータイをいじる鈴森くん。




「あ、あのさ鈴森くん」





”ガラガラ・・・”


鈴森くんがわたしの方を向くと同時に、
教室の扉が開く。





「おーい鈴森~!ちょっと来てくんね?これ返したいから」



CDらしきものを入れた袋をぶらぶら振って見せるその男。




廊下から教室に入ろうとしているクラスの人たちが、
その鈴森くんを呼ぶ男を、邪魔そうな目を向けている。



わたしの方を向いていた鈴森くんはその人のせいで
扉の方へ目をやってしまった。





「ああ、CDか」

鈴森くんはそうつぶやくと、



「ごめん、夏目さん、ちょっと待ってて」

「う、うん・・・」



そう笑顔で言い残し、

廊下から鈴森くんを呼ぶ、
矢野くんの方へ行ってしまった。